とりめも

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中国の国語教科書は挿絵が渋い

私は、今年より大学院への進学のため、関西から関東に引っ越してきた。というわけで、手元には中国の国語教科書が数冊ある。何が、「というわけで」なのだという話だが、神保町に簡単に足を運べるため、そこで手に入れたのだ(一部は通販も使ったが)。古書で有名な神保町だが、中国の輸入本もたくさん取り扱っている。そこで、現在大学院で行っている国語教育の研究で使うかもしれぬと思い、何冊か中国の国語教科書を手に入れたのだが、数ヶ月経ってもちっとも使う気配がない。

 

だが、ぱらぱらめくってみると、いちいち挿絵にリアリティがあって渋い。単に本棚の奥に眠らせておくのは勿体無い。特に、人物の絵が面白い。中国語がわからなくても楽しいので、研究には使わなくとも、ここで紹介したい。

 

※今回の記事では、挿絵の雰囲気が写実的だったり、子ども向けではないような感じがしたら取り敢えず「渋い」と呼びます。

 

日本でいう「国語」に近いものは、中国では「語文」という科目名になる。

まず、表紙を見ていこう。

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写真上の八年、九年と書いてあるものが、日本でいうと中2、中3にあたるようだ。

また、六年級の教科書は間違えて2冊買ってしまった。

 

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ちなみにこれが日本の国語教科書。若い人だと見覚えのある表紙で、懐かしい人もいるかもしれない。上から順に、教育出版の小6、教育出版の中3、光村図書の中3。

 

中国のものは中学生用がなんだか厳かな風景である。そして、小学生用が民族服の人物だった。みんなソース顔である。

 

表紙だけを見ていくと、日本もなかなか大人しい雰囲気があるので、日中の中学生用だと区別がつかないかもしれない。

ただ、中国の教科書は中の挿絵に渋さやリアリティがあるのだ。

 

では、中学生用教科書の挿絵から、グッときたものを紹介させていただく。

【老人が渋いシリーズ】

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この話は知ってる。魯迅の「孔乙己(コンイーチー)」という話だ。没落した知識人の孔乙己。顔のシワが深い。服のつぎはぎも悲壮感を強調している。

 

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子どもはわりと目がクリクリでデフォルメされているのに、おじいさんはリアル。

 

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1枚目、2枚目とは異なり、強そうなおじいさんだ。同じ老人でも表情の書き分けがされている。

 

【表情が渋くて日常的】

中国語がよくわからないが、どんな状況か勝手に想像したくなるものが多い。

 

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「ご飯できたって言ってるでしょう!降りてきなさい!」

 

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宿題の出来が悪くて怒られてそう。

 

【ストーリーがありそうだけど渋い】

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 いろんな人の期待を抱えさせられてそう。

 

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他のものとは違い、SFぽいけど、手前の人の渋い雰囲気だけはブレない。

 

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狼や人もリアリティがあるけど、おじさんの手の血管の浮き具合がすごい緊張感伝わる。

 

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 やや風刺画ぽい。

 

以上が、中学生用の教科書からの抜粋だ。だいたいの人物が写実的である。デフォルメしてあるものもあるが、表情が親しみやすいキャラクターといった感じではない。

また、絵柄が統一してあるのが大きな特徴だろう。日本の場合、単元ごとに絵柄が変わる。

 

次に、小学校六年用の中国の教科書を見ていきたい。この教科書には、日本では中学3年生で扱われる教材である、魯迅の「故郷」というお話が載っているので、そこから紹介する。

 

ちなみに、日本の国語教科書では現在は全ての教科書で魯迅「故郷」が扱われている。習ったことのある人も多いのではないだろうか。もし、気になる方がいたら、教科書とは訳者が異なるが、青空文庫にもあるので調べてみてほしい。

 

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まず、扉に魯迅先生がどかっと座っている。ちなみに、この中国語部分では、「ヒゲが隷書で書いた漢字の一のようだ」って書いてあって、その情報は必要なのか気になった。

また、中学生用と違って、全体的にカラフルなページが多い。

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タイトルが「故郷」ではなく、「少年閏土」とされている。小学生用だからか、全文を扱わず、登場人物である、ルントウ(閏土)の子ども時代の回想場面を取り上げている。

 

とても勇ましい少年に見える。スイカ畑の番をしているのだ。顔つきも中学生用よりデフォルメしている気もするが、それでも、なかなかリアルである。

 

※ルントウ:語り手である「私」の幼少期の友人。 子供の頃は、スイカ畑の番、跳魚、色様々な貝の話をするルントウは、都会っ子の「私」にとって、憧れの存在だった。しかし、数十年後に「私」と再会したルントウは、貧しい生活に苦しんでいる様子で、他人行儀な態度であった。

 

また、 もう1つ挿絵があった。

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⁉︎

急に絵柄が変わった。ほぼ別人である。しかも、キャラクター化したデフォルメがほとんどない。

 

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ちなみに、日本版。

上の教育出版のものは中国版に近いかも。この挿絵は、貧しくなったルントウが子どもを連れて「私」に挨拶してる場面だろうか。

下の光村図書は素朴な印象。ルントウが「私」にスイカ畑の番などの経験談を話している子ども時代の場面のはず。

 

まとめ

*中国の教科書の挿絵はリアリティが高くて、子ども向けのキャラクターぽさは皆無。

*描き手が違ってもなかなか渋い。

 

じっくり挿絵に注目して教科書を読んでみると楽しい。私の場合、思い出深い国語教科書の話って、挿絵ごと覚えてたりもするので、中国に生まれてたら妙にリアリティのある思い出になったのかもしれない。

 

最後に。小学生用の教科書にはキャラクターぽい動物はいたことにはいたが、なんか違った。

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