とりめも

東京のおいしいインドカレーの店を教えて

ケーキ屋のバレンタインデー商戦で英語ができないのに外国人の接客をした話

1月も始まったばかりだというのに、バレンタインの話を耳にする。耳にするといっても、新年が始まってから1度しか外出していないので、正確にはTwitterで目にしているのだけど。

 

七草がゆとか恵方巻とか全部ぶっ飛ばしてるのウケる。早いね。

 

それほど、バレンタインはウキウキする行事なのだろう。

 

ところで、私はケーキ屋で半月ちょっとアルバイトをしていたことがある。大体10月から5月までバイトをしていた。このあたりだと、ちょうど、ハロウィン、クリスマス、正月、恵方巻、バレンタインデー、ホワイトデー、新学期と面倒な行事ごとを乗り越える時期だったことになる。行事があるとお菓子が需要高まるからね。

 

洋菓子店が一番力を入れるのは当然クリスマスなのだが、バレンタインデーやホワイトデーも相当力を入れる。

 

だいたい1月半ばくらいから店内にバレンタインのムードが高まり始める。バレンタイン用の資材(袋とかカタログ)が届くし、店内もピンク色に染まっていく。あと、パティシェのおじさんたちが新作のチョコを量産し始める。なんか、ハートの形の赤色のチョコで「別に普通の味なんだけど売れちゃうんだよね」なんて言っていた。

 

店内のメインの商品は日本酒が入ったチョコレートだった。食べてないので、うまいんだかまずいんだか知らないけど、「これはとてもとてもおいしいものだ」とアピールしなければならない。そのかいあって売れ行きは良かった気がする。在庫が切れた日など、「店内のサンプル(商品を開封したものを透明なケースに入れている)でいいから売ってくれ」っていう客も出てきた。(丁重に断られてた)

 

ところで、普段の私はとろ臭いし頭が良くない。要領のいい行動がとてつもなく苦手だった。バイトしていたのは、今から5,6年前。はじめての長期バイトだったこともあり、掃除だ接客だってワタワタしていると「千鳥さんって動きがスローモーションよねえ」なんて、手が空いている社員から京都仕込みの嫌味をかまされるし、頼まれてもいない仕事が要領よくできなくて「自分で考えられないの??」なんて怒られて「頭弱くてすいませ~~ん」なんてヘラヘラ受け流したりしている日々だ。店舗の中で一番使えないやつ、それが私だった。

 

だが、私の店舗の社員もだいたい致命的に頭が悪かった。そして、前述したとおり、私も頭が悪い。

 

バレンタインフェアの時期に、外国人のお客さんが来店した。韓国の人のようだ。京都の観光地付近にある店舗であるため、そういうことはよくある。そもそも何の店なのかわからずに来店する海外からの観光客も多い。

 

外国人の観光客が来ると英語で接客をしなければならない。それが社員たちにはとりわけ嫌な作業のようだった。

 

この店では、全員の英語力が低すぎるため、外国人観光客は脅威なのである。一度だけ、購入した先から店内でパンを食べ始めた外国人集団がいた。うちの店には、注意できる語彙力を持つ者など存在しない。そのため、店内がちょっとした立食パーティみたいになっていて、内心めちゃくちゃ面白かった。社員はひきつった笑顔を浮かべていた。

 

そこで、社員たちは外国人観光客が来ると私に接客を頼むようになった。大学生だからできるでしょ、的な理由で。待ってくれ。私は致命的に英語ができない。そりゃ、入試を突破するくらいはできたかもしれないが、話すとなれば違う。英語ができなさすぎるため、大学では中国語とイタリア語を履修していた。それほどやりたくないのだ。

 

ある日、一度中学英語の片言に適当に単語をつないだものでやり過ごしたことがあって、社員に「やっぱり大学生なら英語できるんやね!積極的に外国人に接客してや!」なんて珍しく褒められたことがある。

 

だが、社員は奥に引っ込んでいて私と外国人との会話をろくに聞いていなかったのだ。

 

ある日の外国人観光客との会話を記憶のまま書き起こそう。

 

①プリンの違い

客「このプリンとこっちのプリンは値段が違うけどなんで?」

私「ディス プリン…… イズ ユーズド グッド エッグ(良質な卵がつかわれていると言いたい)」

客「???」

私「ディス イズ チープ、ディス イズ リッチ(小声)」

客「OK!」

 

まるで、OKじゃねえよって話だし、販売員失格な会話である。

 

②オススメのケーキ教えて

客「オススメのケーキ教えてよ」

私「チョコレートケーキ!」

客「え?他には?」

私「ディス チョコレートケーキ イズ ベリー ポピュラー!デリシャス!

客(なんか別の買ってた)

 

私がとっさに紹介できるケーキはチョコレートケーキとチーズケーキしかないのだ。

 

話をもとにもどそう。こんな野生児みたいな英語力の私が、接客をしなければならないのだ。社員は何を以て英語ができると認定したのだろう。

そして、この時期はバレンタインのよくわからない新商品も多く、難易度が高い。しかも、社員は外国人が来店したのを一瞥するなり、よそよそしく他の仕事をし始めた。姑息だ!それに、外国人観光客はここ10分くらいなんか迷っているようだ。もう、これは私が接客をしなければならない。ほったらかしてたらマニュアル的にも人としてもダメなやつだ。

 

あ~あ、いやだな、また怒られるのかな なんて思いながら、しぶしぶ「メイ アイ ヘルプ ユー?」と声をかけた。

 

何度も聞き返しながら、外国人から得た情報をまとめると

  • せっかく京都にきたから、男性にお土産を買いたい
  • 限定の品とかないの?
  • 京都っぽいものないの?
  • チョコは好き

ということらしい。

絶対、他の店に行った方がいい。

 

洋菓子店に外国人が求めるような京都っぽいものはないから、歩いて数分の八つ橋屋さんに向かった方がいい。八つ橋クランチっていう、八つ橋が練りこまれたチョコレートが600円ちょっとくらいで売っているからそれを買えば、全部の条件を満たすし、日持ちもする。

 

とか言えるはずがない。私は販売員だ。売らなきゃならない。理不尽だし、他店のほうが素敵な旅の思い出になると思っていても、別の店の宣伝などできないのだ。ごめん外国人さん!!!

 

とりあえず、店内で一番日本っぽい日本酒入りのチョコレートを勧めてみることにした。ジャパニーズ アルコール チョコレート とか適当な英語で。正直、この商品は外国人の求める商品に近いし、限定品だし、店としても売り出したいのでベストだと思うのだが、なんだかピンとこないようだった。試食品があればよかったんだけどね。

 

すると、外国人は、目の前の棚にあったバレンタインの限定チョコレートを手に取った。外国人は「このチョコレートは何が入っているの?」と聞いてきたが、たぶんアーモンドだ。本当はクルミとかピーナッツなのかもしれない。食べたことがないのでよく分からんから、ナッツって答えておいた。

 

よく分からないけれどそのチョコレートが気に入ったらしい。ご機嫌の外国人は、私に自分の親友について英語で猛烈な速さで話して、意気揚々とレジに向かっていった。

 

普通だったらこれで一件落着だろう。ところで、読者の方は、外国人観光客をどのような人物だと思っていただろうか。

実は、女性ではなく、男性なのだ。

韓国人の男性客。男性が男性にプレゼントするのに、お土産を買いに来たのだ。

それなのに、ロゴとかよく見たらValentineだとか書いてある袋を手に提げてご機嫌で去っていった。「バレンタイン商品だよ」ってどう伝えるか考えてるうちに、レジに向かって行ってしまったのだ。

無知が招いた悲劇……。

バレンタインの時期がくるたびに、「ごめん……」って思い出す。親友にプレゼントって言ってたし、どうかなっちゃったんじゃないかな。それなら、いいのかな。

 

どうなったんだろうなあ。