とりめも

東京のおいしいインドカレーの店を教えて

バレンタインデーの手作りチョコでガトーショコラを炭にした話

今週のお題「バレンタインデー」 にあやかった記事です。

 

バレンタインデーが近い。自分用、恋人用、友達用、職場用なんにせよチョコをどうにかして手に入れなければならなくて頭を抱えてる人もいるだろう。

 

手作り派と購入派に分かれると思うが、恋人に渡すなら圧倒的に購入派だ。恋人じゃなくとも、買って済むならそうする。

 

「作るのが面倒臭い」という理由もあるのだが、それ以上に「わけのわからないものができる不安」「我が家の衛生面は大丈夫か」「お菓子作りの道具を買い揃えるコストでチョコ買えちゃう」「ラッピングも拘るとチョコより高い」などの消極的な理由が出てくる。

 

対して、購入するとなると、「綺麗な包装」「衛生面の安心」「味」等々が約束され、いろんな不安が払拭される。そう、不安がなくなる、のだ。不味くても、チョコの会社が悪いと言えちゃう。

 

あと、選ぶのは楽しい。自分の料理の腕や設備を考えると作ることのできるレシピはかなり狭くなるが、買うのならばそこらへんは気にしなくていい。それに、賞味期限もきちんと明記してある。

 

そんなわけで、私は圧倒的に購入派なのだが、購入が許されない時もあった。高校生の「友チョコ」だ。

 

学校によってはお菓子の持ち込みが禁止されたりすると思うが、うちの高校はそこらへんがゆるやかだった。

 

とりあえず、自分の学校の雰囲気を説明しよう。

 

都会とは違い、私立学校より公立学校のほうが偏差値が高くなる地域で、一応地域の進学校の括りに入る学校に通っていた。進学校だからか、荒れてる子も少ないので、校則はほとんどないようなものだった。私服通学だから、制服指導なんかもない。携帯の持ち込みもアリ。授業中に携帯が鳴らなければオッケーくらいのルールだ。

 

あと、教育費をたくさんかけることができる富裕層の家庭が割と多い印象。医者の子ども、副市長の子ども、ホテル経営者の子どもなどが周りにいた。普通はクラスに1人金持ちキャラがいれば十分だと思うが、5,6人はいる感じだ。

 

関係ないが、バレンタインでもなんでもない日にさほど仲良くもない子から「フランス土産のチョコ」を貰ったこともある。お前は、ちびまる子ちゃんの花輪くんかよ(花輪くんは遠足にフランスのチョコを持ち込む)。

 

そんな、地方のまったりした自由な進学校故か、とにかく、日常的にお菓子を交換しまくるクラスメイトの集まりだった。たまに、手の込んだものを作ってくる子もいる。普通の高校もそうなのかな?

 

校則がないような学校なので、バレンタインやホワイトデーのイベントごとも別に規制されない。むしろ、先生たちもヘラヘラしてるし、気前のいい子が多いので、みんなが堂々とイベントを楽しんでいた。気前がよすぎて、クラス全員に配り出す子もいる。

 

ただ、いくら富裕層が割と多い高校でも、やはり、そこは高校生。バレンタインやホワイトデーは手作りが多かった。ばら撒く個数と手作りでお菓子を作れるスキルが大事なのだ。

 

そんな校風にも慣れてきた頃、わたしも手作りバレンタインに挑戦してみようという気になった。たぶん、高校2年の時だったと思う。

 

高1の時は唯一失敗せずに作れるクッキーで誤魔化したはずだ。粉とバターを混ぜて、型を取って焼くだけだから簡単だ。バレンタインデーに渡さず、ホワイトデーにお返しする作戦で乗り切った。でも、今年はバレンタインデーにあやかりたい。

 

ちょっと見栄を張りたくなったのだ。

 

高1の家庭科の調理実習で手際が悪すぎて、出しゃ張りたがりのガチョウみたいな女子にガーガー怒られたが、そんなの知らない。うるさくされなきゃ本当は作れるんだよ、なんて心の底で思ってた。私だって、「すごい」って思われたい!

 

「楽に作れて見栄えのいいものは何か」と身も蓋もないことを、家庭科教員の免許を持つ母親に問うたら、「フライパンでできるガトーショコラ」のレシピを提案された。

 

チョコレート5個を切り刻んで湯煎して、卵だか小麦粉だかバターを混ぜて焼けばいいらしい。あと、フライパンじゃなくて卵焼き器で作れば、スティック状にカットできるから良いらしい。ガトーショコラって何なんだか知らんが、簡単じゃん。しかも、クッキーよりバレンタインだ。

 

そんなわけで取り掛かることにした。「チョコレート5個を切り刻んで湯煎して、卵だか小麦粉だかバターを混ぜて」までは順調だった。

 

さて、できた液体を卵焼き器に流し込む。そして、火をつけて、表面に膜が張り始めたらひっくり返すのだ。ヨユーじゃん。

 

火の前でウキウキ心弾ませながら番をしていた。母は買い物に行ってしまった。

 

1時間くらい経過した。

 

一向に、固まらない。

 

レシピでは15分くらいで出来るって書いてたけど、ウソなのか?素人だと時間がかかるもんなのか?いやいや、おかしくない?

 

なんて不安は的中した。買い物から帰宅した母がわたしを一瞥するやいなや、何が何やら怒号をあげ、ものすごい剣幕で火を止め、なにかまくし立てるようにキーキー言っている。は?え?

 

まとめると、「卵焼き器はフライパンよりそこが浅いんだから、液を全部流しこんではいけない」らしい。へー。なるほど。知見だ。料理苦手な人にはできない発想だわ。家庭科の成績が劣等生なわたしには、教師の手助けがないと達成できない学習項目だ。

 

素直に感心するのが許されそうな雰囲気ではなかった。

 

とにかく失敗らしいので、ガトーショコラになる予定だったものを皿に取り上げると、ドロドロのチョコの中から、各辺約3センチの立方体のような塊が出てきた。唯一、ガトーショコラになれた部分だ。そして、1時間も熱しているので、底の方は炭になっていた。炭の中からガトーショコラが出てきてる。大笑いしてしまった。ウケる。牛一頭からわずかこれだけしか取れない貴重な部位かよ。元は板チョコのくせに。

 

大量のチョコが廃棄になるわけで、「ガス代が無駄」「チョコがもったいない」とのバッシングから逃げるように自室にこもり、泥のように寝た。今日は疲れたのだ。髪の毛にチョコの匂いが染み付いていて気持ち悪い。

 

バレンタインだかホワイトデーは、またクッキーをつくるか、ちょっといい小包装のチョコを可愛くラッピングしよう。家庭科より美術科が得意な自分はこれでいいだろう。

 

泥のように寝ていると、部屋のドアがノックされ、母が綺麗にできたホール状のガトーショコラを見せてきた。あっ、フライパンで作ってやがる。学びだ。

 

「明日困るなら、これを持って行きなさい」と母は言った。

 

それは違うな、って思った。本来は「千鳥ちゃんすごい」って褒められるはずなんだよ。それじゃ周りの子が「千鳥ちゃんすごい」って言ってくれても、本当は「千鳥ちゃんのママすごい」の意味じゃないか。あんまりだ。

 

そんなわけで、母の心配をはねのけて私が食べた。ホワイトデーに頑張ればいい。へー、ガトーショコラってこんな味なのか。濃厚なチョコケーキっぽい。家庭科の先生の免許ってすげー。

 

そして、「無理をしない」「見栄を張らない」ことを学んだ冬だった。

 

追記

クッキーはいいぞ。粉の量が多少適当でも、焦がさなければそれっぽくなるぞ。