とりめも

東京のおいしいインドカレーの店を教えて

暴力で退学した高貴な友人

友人って書いたけど知人かもしれない。でも、友人だった時もあったんだ。

 

京都にある私大の学部一年生のときの話。同じクラスにその男の子がいた。

 

私の大学の文学部は、一年生のときにクラスがあった。その男子学生は、柔道やってたらしくてガタイが良かった。でも、顔立ちは高貴な美少年みたい。声も小さい。なかなかアンバランスで面白かった。

 

彼は、浪人生で東京出身だった。その両方になぜかコンプレックスを持っているようだった。

 

私の北海道弁が「バカにしてるように思えた」と胸ぐらを掴んできたり、九州出身のクラスメイトに「東京モンって言われた」(たぶん誰も言ってない)と愚痴を言ってきたりした。

 

あと、彼は東京時代のバイトの話をよくしてくれた。東京にある日本一のマクドナルドで働いて先輩に褒められていたから、スゴイ人間なんだそうだ。

 

あと、あと、「僕は後期入試で入ったから、他のやつらとは違う」とよく愚痴を言っていた。うちの大学は内部進学とかAOで入れるので、いいたいことはわかる。

 

彼は、いいとこの坊ちゃんだった。私立大学には時々家柄が良すぎて苦しむ人がいる。なんかおうちが厳しくて、実家には帰りたくないらしい。

 

でも、いいとこの坊ちゃんなので、それなりにキザだった。サイゼリヤに行くのに張り切って「イタリアのいい革靴」(説明が長くてあまり覚えてない)を履いてきてた。

 

彼は顔立ちがいいのと、なんか学級委員感が出ているので、学部二年生くらいまではみんなに慕われていた。適当な学生が多いちゃらんぽらんなクラスだったので、すぐに頂点に立てる。

 

彼はパソコンをほとんど使えなくて、夜中3時に私の家にプリンターを借りに来ることがあった。発表前日だとかで。彼の勘違いで胸ぐらをつかまれた翌日とかで険悪だったので、「コンビニ印刷を使え、そんなモン」と追い返したかったが、「わからない、できない」の一点張り。

 

なんだかんだでプリンターを貸したのだが、私が途中、操作を間違えたのを「だから、君は」と責め立ててくるので、「うちのプリンターのインクと紙なんだから別に良くない!?」とまた口論になった。

 

途中、彼は「このことはクラスの人には絶対言わないで。夜中に女の子の家にプリンター借りに行く迷惑なやつだと思われたくない」と言っていた。「その通りじゃん」ってケラケラ笑ったら怒られた。これは私も悪い。

 

(口論になりながら、大学の同じサークルの留学生で、今一緒にコミケのサークルで活動してるゆうくんにメールで慰めてもらってのはいい話。)

 

そのとき、彼はどこか「おかしい」と確信した。話が噛み合わなさすぎるので。でも、クラスの学生は彼を慕っていた。

 

ちなみに、彼は朝5時くらいに帰って行った。途中「頼むから帰って……」って何度も言ってしまった。小学生の頃に母親が「遊びに来た友達と喧嘩しても 帰って って言っちゃダメだよ」って教えてくれたけど、例外というのもあるよな、って無理矢理自分を納得させた。

 

さすがに今は許しているけど、当時はそれをきっかけにそれから1年くらい口をきくことがなくなってしまった。

 

彼は完璧主義者だったんだと思う。3年の時に彼がクラスでの研究発表を急遽取りやめたことがあった。USBが破損しただとかで。担当の教授も他の学生も誰も怒っていないのに、「僕が失敗するなんて初めてだ、僕が失敗するなんて初めてだ」とブツブツ呟いていた。それまでも、わりと失敗多かったと思うけど……。

 

彼は2年生か3年生のとき、学生自治委員会の会長に立候補していた。なんなのかよくわからないけど、文学部の中の生徒会総選挙みたいな感じだ。我が文学部を牛耳っていくのだ。

 

大学生の選挙は中学や高校ほど力を入れないものだと思うのだが、彼はパソコンの基本操作もできないのに独自のルートで手に入れたツテを使い、顔写真入りのポスターを配りまくっていた。いろんな講義に顔を出して、無理やり演説をするので、少し噂になっていた。やばい奴がいる、と。その期間は、選挙に全てをかけていて、ちびまる子ちゃんの丸尾くんみたいだった。

 

彼は当選した。私がわざわざ別の人に投票した努力もむなしく、当選した。

 

私の所属していた中国文学専攻は15人しかいない(日本文学は100人くらいいる)のだが、その中から学生自治長が出るなんて、教授たちも喜んでいた。「お祝いの飲み会をやろう」と教授からメールが回ってきた(これも、教授主催じゃなくて、彼主催らしいが)。そのころには、彼の信用もそこまでなかったので、参加者は高貴な彼、教授、社会人学生のおばちゃん だけだったらしい。私も行けばよかった。

 

それから彼は学生自治の鬼になった。会うたびに「自治が〜〜自治が〜〜」と言っていて、忙しそうだった。彼の公約の一つに、学部事務室の窓口のおばさんの愛想が悪すぎるからどうにかしたい みたいなのがあって、それは支持した。卒業までどうにもならんかったけど。

 

彼が学生自治の鬼になって、1年か1年半くらいたった、4年生の春。彼は消えた。

 

3年生のときから彼とは違うゼミだった。(15人の学生を2つのゼミにわける。私は思想、彼は文学のゼミだった)

 

それでも、私にも彼が消えたことがわかった。

 

新聞部の学生が作った新聞に「文学部の学生自治長が暴行を働き退学」と書いてあった。普段、大学新聞なんか見ないくせに、写真まで撮って保存した(後にスマホが壊れてデータが消えてしまった)。

 

(後々、新聞部のホームページから、その号の新聞を閲覧したら、彼の記事の部分だけ隠されていた。大学からなんか言われたのかもしれないが、これこそ報道すべき内容なのにとも思う。普段いいことばかり書いてるし。)

 

で、詳しい人に聞くと、カサで自治会の女の子を殴ってしまったらしい。本来なら警察沙汰になるはずだけど、女の子が自治長を慕っていたとかなんとかで、退学扱いで丸く収まったようだ。一年生のときから「あいつはおかしい」と言っていた私の主張が当たっていたわけだが、なんだかなあー。破天荒だよ。そんで、後味悪いよ。

 

今考えると、もう少し仲良くなっておけば面白かったかもな〜〜という気もする。夜中にプリンターを借りに来て文句言われても許してあげればよかった。「おかしい」って言葉でまとめてしまったが、彼からすれば私が「おかしい」のだろう。いろいろ聞いてみたら友達になれたかもしれない。

 

で、日本一のマクドナルドってどこなんだ。教えてくれ。