とりめも

東京のおいしいインドカレーの店を教えて

初めて立ち飲み屋に行った日

3年くらい前の3月。大学院に入学する前の春休み。

 

卒業式の翌日に京都から千葉へ発ち、早々に引っ越しを済ませ、ほんの二週間ほどの学生でも社会人でもないヒマな期間を持て余していた時期があった。

 

初めて関東で一人暮らしすることになった喜びもあり毎日フラフラ出歩いていたのだが、それもすぐに飽きる。

 

そんなある日、唐突に立ち飲み屋に行ってみたくなった。立ち飲み屋って行ったことがないからなんなんだか知らないけど、自分の好きな教科書に載ってそうな作家たちの小説に出てきそうだ。無頼派って感じがする*1。なんかカッコいい。

 

あと、大学を卒業したからそういう所に行っても許されるような気がした。周りの子はこれから社会人になる人が多かったので、年齢的にも許されるだろ的な。

 

適当に調べると、上野のカドクラというお店が人気らしい。せっかくなら人気のところに行ってみよう。西千葉駅から電車で1時間くらいだ。道民的には「遠くはない」って感覚。

 

突如、謎のエネルギーがわき、気がつくと外出していた。当時、ブログはやっていなかったしライターでもなかったので、ネタ探しではなくて単純な好奇心に動かされている。

 

しかし、いざ、店の前に着くと「うっ…」と身構える。社会のいろんな試験や選抜を乗り越えてそこそこな地位を確立してそうなおじさんで溢れている。

 

家庭も就職先も金もない自分が入っていいんだろうか。ふるいにかけられた人たちだからこそこうして歓談に耽っていられるのではないだろうか、って気にさせられる。

 

とりあえず、店の周りをウロウロしたあとに、エイヤと入店する。ここで帰ると一生行かないだろう。勿体ない。

 

店の中は兎に角やかましかった。カクテルパーティ効果がまるで機能せず何を言われてるのか全くわからなかったが、若い兄ちゃんの店員に威勢良く奥に案内された。

 

よくわからんけどついていくと、店の奥の壁と向かい合わせになる。そういえば、立ち飲み屋だから椅子がない。ホントに立ち飲みだ。行儀が悪いようで不思議な感覚。

 

入店して10分くらい。とにかくガヤガヤしてる雑音と、それに負けない店員の受け答えに圧倒されていた。

 

さて、ところで、注文の仕方がまるでわからない。

 

観察していたところによると、店を出ていく人がお金を払っている様子はなさそう。じゃあ、いつ払うの? あと、他のお店みたいに店員さんが注文を聞きにくるまで待ってたほうがいいの? 謎……。正しい振る舞いがわからない。予習が足りなかった……。

 

わからなさすぎるのでネットで調べようとしたら、隣にいたおじさんが声をかけてきた。

 

おじさんによると、好きなタイミングで店員を呼んで都度都度支払いをすれば良いらしい。

 

へえ。

 

この空間で何回も呼ぶのはエネルギーが要りそう。食事を2,3品、酒を1杯まとめて注文した。

 

注文が済むとおじさんが雑談の相手になってくれた。

 

・初めて?

・どうして来たの?

・大学生?なんの勉強してるの?

 

そりゃそうだよなって質問だった。

初めてで、なんとなく気になって来てみて、中国文学の専攻を卒業して国語教育の研究のために教育学の院に進む と説明した。

 

4月からの大学院生活での自己紹介でも何回か話しそうな内容だ。

 

おじさんと何を話したかは鮮明に覚えてないが、人当たりのいいおじさんだった。同じ年齢の娘がいる話をしてくれた。

 

あと、立ち飲み屋に入る前にロフトで購入したバカでかいクッション*2に食いついて来た。ロフトで買い物して、立ち飲み屋来たの! ってなぜか面白がっていた。おじさんにとってロフトは若者のショッピングの地らしい。それなら仕方ないか。

 

しばらくすると、食べ終わっちゃったし、話すこともなくなったので、おじさんにお礼を言って退店した。はじめての立ち飲み屋体験は良い印象だった。

 

その後、一人で立ち飲み屋に行ったことはない。ルールがわからなさすぎて、挙動不審になってしまうし、振る舞いにエネルギーを使うのが大きい。あと、一度行ったら満足してしまった。

 

もう、おじさんの顔は覚えていない。

しかし、おじさんが雑談の中で「教育の大学院に行くの。そういう人がいるのは、素晴らしいですね。いい先生になってください」と言葉をかけてくれたのだけは鮮明に覚えている。

 

先生にはならなかったし、おじさんも適当なことを言ったのかもしれないが、なんかいい感じに覚えている。正直、文系で院進学することに引け目があったので、おじさんの無責任な賞賛は少し気晴らしになった。

 

3年経って回想したが、飲み屋での知らない人との適当な雑談も悪くないのかもしれない。あと何年すれば、エネルギーを使わずに、そんな場を楽しめるようになれるのだろうかね。

*1:ただただイメージである

*2:枕にする予定だった