とりめも

東京のおいしいインドカレーの店を教えて

性の悦びおじさんに会った日のこと

性の悦びおじさん*1

とは2016年頃に話題になったおじさんである。ネット有名人なので検索するとすぐ出てくる。

電車内で「性の悦びを知りやがって許さんぞ!」と大声で怒鳴っているところを盗撮されSNSで破茶滅茶にウケたのが愛称の由来であるようだ。

 

この間地元で飲んでいると、たまたまそのおじさんの話が出てきて思い出した。会ったことあるんだった。

 

大学院生の時、いつものように混雑している昼間の渋谷を歩いていると、おじさんは突然現れた。

渋谷駅のハチ公口?近くのデカイTSUTAYAが見えるスクランブル交差点で信号が切り替わるのを待っていると、怒鳴り声が聞こえる。信号は赤なのに、自分の周りの人が一歩前へ踏み出す。

 

皆の視線の先に私も目を向けると、ネットで見たことのあるおじさんがいた。

 

小柄なのに体格が良い。グレーのピチピチのシャツで、肩をいからせながら、のっしのし歩いている。168センチの私よりも小さいのに存在感がある。殴り合ったら負けると思う。

 

この日のおじさんは、「ギャルは顔黒ギャルが良いのに最近のギャルは白い」と怒っていた。顔黒ギャルって久々に聞いたな。渋谷のギャルに聞かせてるんだろうか。聞いたか?需要は美白ではなく顔黒にあるらしいぞ。おじさんの需要に合わせてギャルやってるわけじゃないだろうから、聞く必要もないんだけど。

 

パッと見た感じ、ネットの有名人であることを差し引いても、おじさんの行動は不審者のそれにしか思えなかった。声がデカいから目立つんだよね。ネットで知ってても怖くて、一歩前に避けてしまった。怒らせたらどうなるかわからない感がある。

 

正直おじさんには失礼だが、ネット有名人を見つけた嬉しさよりも、恐怖が勝った。

 

しかし、この街は渋谷である。

 

おじさんに対して手を振る若者やフレンドリーに写真を撮る若者(盗撮なのは良くないけど)もいた。その場の人々が、おじさんを自由にさせているのだ。誰も咎めない。慣れっこなのか、皆、異常者を受け入れるのが早い。相当人数がいたが、悲鳴を上げる人などいなかった。

 

泥酔してるのか、汚言症なのか、その他の障害等が原因なのかはわからないが、おじさん側には悪気はないのは確かだろう。なんらかの理由があって、汚言を叫ぶ事情があるのだろう。

 

バズ狙いでSNSで拡散はする若者はたしかにいる。だが、おじさんの存在自体は否定しない街である渋谷。おじさんにとって居心地が良かったのだろうか。居心地が良かったなら嬉しい。

 

渋谷に対する印象は今も昔も変わらない。

 

ゴチャゴチャしてて、うるさくて、臭くて、迷惑をかける人も多い街。でも、世の中の普通から外れた人でも、なんとなく溶け込めたり面白がられたりする空気を感じる。

 

TwitterのSHIBUYA MELTDOWNアカウントが、時折、泥酔した若者の写真をUPしているが、たしかにあんな風に酔い潰れている若者は週末の渋谷でよく見る。よく見すぎて、渋谷の風景なのではないかと思えてくる。泥酔くらいの失敗なら、渋谷がカバーしてくれる心強さまである。

 

性の喜びおじさんと遭遇して約3日後、おじさんと見られる人物が電車内でトラブルを起こして取り押さえられた際に亡くなったらしい。

 

見かけた時は見ず知らずのおじさんが叫び散らかす姿に恐怖の感情しかなかったが、さすがに呆気なさすぎて少し切なくなった。本人かどうかはわからないけど。

 

だが、そもそも、おじさんは世のレールから外れても受け入れてくれる渋谷の寛大さと悪意のバランスに泳がされていただけなのかもしれない。取り押さえられルートが通常なのではないか?

 

何でもかんでも受け入れてしまう(悪意でも面白がってでも無関心でも)空気は、一見優しい。だが、長期的に見ていずれどこかで不都合を生み出す。思考停止の生温い拷問である。そして、私もやりがち。

 

ともかく、電車内で叫んだり暴れるのはスクランブル交差点じゃないから許されないんだよな。奇行に走るおじさんの存在を受け入れる人はたくさんいたかもしれないが、世のルールを教えてあげられる人は、私を含めて誰もいなかったんだろうなあ。

*1:

今調べると、気さくなおじさんらしく、記事の取材やテレビの取材も受けているようだった。へえー、怒ってる姿のイメージだった。いろいろ事情があるんですね。

(3ページ目)「お前ら許さんぞ!」“性の悦びおじさん”、YouTuberと若者にモノ申す!!|日刊サイゾー